2025年 03月 01日
拝啓、錦陵球児の君たちへ
春の選抜出場校の重要な選考資料となる昨秋の快進撃。
数々の強豪校を破った粘り強い勝利は、母校に伝わる
錦陵魂(赤土魂)を発揮した見事な闘いでした。
あと1勝で甲子園。21世紀枠での出場も叶わず、
残念ではありますが、九州大会ベスト8という母校初の快挙。
地元で育った普通の高校生でも、コツコツと努力すれば、
遠い夢の世界であった甲子園に手が届くかも……。
君たちが九州大会の初戦で勝利した瞬間、
私はスタンドで涙を流し、同窓の仲間達と抱き合いました。
夢と希望。そして、素晴らしい感動をありがとう。
自信と誇りをもって、堂々と胸を張ってください。

現在、君たちは夏の甲子園に向け、努力精進している最中。
厳しい練習で流す汗と涙。思うようにならない苦しみや苛立ち。
様々な悩みや葛藤。自分自身とも闘っている日々だと思います。
しかし、その悩みや葛藤こそが、大人へと成長している証。
人間は完全ではなく失敗や悔しさから、多くを学んでいくものです。
悲観することなく、思い通りにならない日々こそを大切にしてください。
その全てが、将来の君たちにとって、貴重な財産となるはずです。
申し遅れましたが、私は母校の教壇に18年間、立ち続けた元教員。
また、君たちと同じグラウンドで汗を流した一人でもあります。
みやこ町の山間部、錦陵の地で開校された育徳館(旧豊津)高校。
母校は今年、創立267周年を迎える福岡県下で最も古い学校。
当然、野球部も全国屈指の歴史と伝統を有していますが、
甲子園への出場は夢のまた夢、果てしなく遠い存在でした。
特に私が在学した当時は、部員が9人揃わない弱小チーム。
廃部の危機に、部員確保のために請われて二年生から入部。
そんな部員ではありましたが、高校野球を通して多くを学び、
仲間と過ごしたグラウンドでの日々は、今も心の支えとなっています。
さて、やがて春が過ぎ、闘いの舞台となる夏がやってきます。
それは当たり前のことのようですが、そうではありません。
私が三年生の担任として迎えた四年前は、コロナ禍で大会が中止。
この年の球児達には、いつもの夏が、やって来ませんでした。
三年間の全てを賭けてきた最後の舞台が突然消え去り、
涙を流し、理不尽な現実と向き合いながら巣立っていった生徒達。
そんな彼らも昨秋、スタンドから大きな声援を送っていました。
君たちがプレーできることは、決して当たり前のことではなく、
保護者や先生、大会関係者等、多くの支えや応援があるからこそ。
当然、 勝利を重ねて甲子園を目指すことは重要ではありますが、
より大切なことは、君たちが感謝と誇りを持って悔いなく闘うこと。
特に三年生は、最後となる暑い夏。自分自身を熱く輝かせてください。
いつもの夏がやって来て闘えることは、それだけで幸せなことです。
君たちの健闘を祈ります。
錦陵の同窓生(元教員)より
2025年 02月 15日
“またトラ”と民主主義
恥ずかしい。そして、世界の人達に申し訳ない」
昨年の11月、新大統領の当選が確実になった翌日、
来日していたアメリカの友人が淋しそうに呟いた。
もしトランプ氏が、また大統領になったら……。
世界が注目する中、アメリカ国民はトランプ氏を選択。
“もしトラ”が現実となり、“またトラ”となった。
保守主義とリベラル。自国第一と国際社会との協調。
求める幸せのかたち、人としての倫理観など、
大きくすれ違う思いや理想、あるべき国の姿。
分断という言葉で表現されている国民間の深い溝。
貧富の差が拡大していく中、インフレや移民問題等、
民衆の不満を巧妙に投票行動に結びつけるポピュリズム。
友人同様の思いをしているアメリカ国民は数多くいる。
自由主義社会のリーダーとして輝いていたアメリカ。
世界政治の中心、ホワイトハウスや議事堂界隈で記念写真を撮り、
ポトマック河畔にあるリンカーン記念館にも立ち寄った。
館内のリンカーン大統領像の側に刻まれている民主主義の原点
ともいえる“人民の人民による人民のための政治”という言葉。
民主主義の根幹は、多数派が自己の利益のみを追求することなく、
少数派等の多様な意見を尊重して、お互いが共存していくこと。
人民のための政治、とは何なのか。今、その根幹が問われている。

次々と大統領令に署名していくトランプ氏。
中には、地球温暖化防止に向けてのパリ協定からの離脱、
世界保健機構(WHO)からの脱退も含まれていた。
国際社会からの孤立を深めようとしているアメリカ。
かつて、We Are The Worldの歌がヒットした頃、その推進役であった
超大国は、地球市民のあるべき姿とは、逆の方向に歩き始めた。
アメリカのマッカーサー草案が元になった日本国憲法。
戦後日本の指針となった憲法の格調高き前文には、こう記されている。
“われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して
他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は
普遍的なものであり、この法則に従うことは自国の主権を維持し
他国と対等関係に、立とうとする各国の責務であると信じる。
ポピュリズムが蔓延し、厳しい試練に立たされている世界の民主主義。
本来のグレートアメリカとは、世界から尊敬される国として、
日本国憲法前文が示す国際世界を築くための使命を担うこと。
そして、リンカーンの言葉の真髄を実践することだと思う。
アメリカの友人が、母国への誇りを取り戻すことができる4年間。
世界の安全と平和、多くの人権が尊重される4年間であってほしい。
2025年 02月 01日