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へいちく物語① 赤字ローカル線から再スタート

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福岡県東部、京築地方の中核として栄えてきた行橋市。
行橋駅を発車したレールバスが、ホームから遠ざかる。
空席が目立つ車内の前方に、痩せた初老の男がひとり、
車窓に広がる長閑な光景を感慨深げに眺めていた。
車輌から発せられる懐かしい音と心地よい振動。
男にはそれが、呟きのように感じられた。

*  *  *

・・・コトコトコト、コトコトコト。
あーぁ・・、ボクは、どうなるんだろう・・・。
昔は、あんなに多くの人がボクを利用してくれていたのに、
今はこのとおり。経営が厳しいボクを、どうしていくのか、
現在、今後の方針を決める話し合いが行われているんだ。
ボクは、行橋から筑豊の田川や直方まで走る“へいちく”。
ちゃんとした名前は平成ちくほう鉄道。元々は、旧国鉄の
田川線、伊田線、糸田線で、大活躍していた時代もあったよ。
それは、筑豊に石炭産業が栄えていた頃の話で、貨物列車が
毎日数多く走り、戦後日本の高度経済成長を支えていたんだ。
あの頃は、沿線に多くの人達が住んでいて、朝夕は大混雑。
職場や学校に通うために、多くの人が利用してくれてもいた。
その後、炭鉱が閉山して、ボクの役割は徐々に薄れていった。
旧国鉄が民営化されてJRになって、赤字ローカル線として、
廃止されることが決まり、役割を終えることになりかけたんだ。
でも、ボクは当時、地域にとって、欠かせない存在だったので、
沿線の自治体等が第三セクターを設立して、経営を引き継いだ。
ワンマン運転のレールバス導入や駅の無人化等の合理化も実施され、
ボクは、平成元年10月に平成ちくほう鉄道として再スタートした。

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そうそう、その頃、モモちゃんは行橋市役所の広報担当職員として、
カメラを担いで走り回っていたよね。そして、ボクのことも取材して、
広報紙で、その晴れ姿を特集記事として大きく掲載してくれたよね。
あの時は地域の期待を胸に、また走れるようになって嬉しかったなぁ。
みんながボクを利用しやすくするために、運行回数を大幅に増やし、
地域の要望を積極的に受け入れて、新しい駅を次々と誕生させたんだ。
その成果もあり利用者が増加。当時は明るい希望があったんだけどね。
モモちゃんはその後、平成6年に11年間勤めた行橋市役所を辞めて、
県立高校の教師になり、北九州市内に移り住みことになったんだよね。
それ以降、段々、ボクと疎遠になっていったよね。淋しかったなぁ・・。

*  *  *

行橋から二つ目の駅は美夜古(みやこ)泉駅。美夜古は平安時代の書物
に記されたこの地の呼び名。平成3年にその名を蘇らせた新駅が誕生した。
三つ目の駅は、平成2年に誕生した今川河童(かっぱ)駅。地域に伝わる
河童伝説にちなんだもので、住民要望が実現してユニークな駅名となった。
河童の像に見送られ、少し走ると豊津駅。ここは、国鉄時代からある駅で、
ここを過ぎると行橋市から、京都郡みやこ町の豊津(旧豊津町)に入る。
車内では、ゆっくりと時が流れ、へいちくは、様々な思いを呟き続けた。
                       (次回へとつづく)
         
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※平成ちくほう鉄道はJR田川線(26.3km)、伊田線(16.1km)、糸田線(6.8km)を平成元年10月に受け継ぎ第三セクターとして発足。新聞報道によると利用者はピーク時の4割まで減少し28期連続で赤字を計上。現在、存続をめぐり県が設置した法定協議会で鉄道維持やバス転換などの案が示され、今年3月までに方針が決まる予定。















by inakasanjin | 2026-01-15 10:00 | Comments(0)