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卒業式と魔法の言葉

三月は卒業式シーズン。
私が講師を勤める高校でも卒業式が行われ、
230名の若人達が学舎を巣立っていった。
式辞の中でS校長は人生訓として、五木寛之氏の『大河の一滴』
の一節を披露した後に「人生は順風満帆の時ばかりではない。
諦めずに前向きに最善を尽くし、さらなる飛躍をとげてほしい」
と母校の後輩達へ最後のメッセージを贈った。

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式終了後、恩師と保護者の拍手の中、退場していく卒業生。
目に涙を浮かべながら、照れくさそうに胸を張る者もいた。
疾風怒濤の青春時代を共に過ごした級友や学舎との別れ。
学校生活で芽生えた友情。部活や学校行事で流した汗と涙。
目標に向けての挑戦と挫折。思い通りにならない苛立ちや怒り。
泣いたり、笑ったり。いろんなことがあった三年間。
貴重な日々を思い浮かべながらの卒業式だったに違いない。

この日、生徒達を見送った三学年の先生方の目にも涙。
後輩教師に慕われ、生徒を見守り続けたK学年主任。
様々な思いを抱いての卒業式。真心溢れる学年運営だった。
また、日々、生徒と必死に向き合った若き担任達。
還暦を過ぎたベテラン教師も見事に担任の職責を果たした。
生徒を預かり、重い責任を背負いながら卒業式を目指す。
途中、思い通りにならないことも多く、ヒヤヒヤの連続。
みんな、気力・体力を振り絞っての毎日だったに違いない。
そんな教師にとって、最後のHRは喜びと感動のひととき。
巣立っていく生徒が発してくれる「先生、ありがとう」は、
これまでの全ての苦労が報われる魔法の言葉となり、
その感動を胸に刻み、再び新しい一歩を踏み出していく。

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私自身も教師として多くの生徒の巣立ちを見送ってきた。
若気の至りで大声を張り上げ、生徒と向き合った若き教師時代。
未熟な教師だったが、周囲の先生方に助けられ、生徒からも学んだ。
教師は生徒を教えることが仕事だが、生徒から教わることも多い。
「子供に大切なことは……」「学校のあるべき姿は……」等と
評論家や世間は勝手なことを言うが、理想論なら誰でも言える。
しかし現場は、理想論ではどうにもならず、特効薬は存在しない。 
解決策は信頼関係を築き、一人一人と向き合い地道に対応すること。
約束が破られ、期待を裏切られても、生徒に寄り添うことが求められる。
しかし、そんな神様のような所業を人間である教師にできるはずがない。
だが、そうあろうと努力し、日々悩みながら生徒と共に成長していく。
だからこそ、巣立つ生徒が最後に発する「先生ありがとう」は魔法の言葉。
私が長年、教師を続けられたのは、この言葉のお陰かもしれない。

卒業や退職、異動等、身近な人と離ればなれになるこの季節。
「ありがとう」「お世話になりました」「お元気で」の言葉が交わされ、
いろんな場所で、いろんな思いで、いろんな別れがあるのだろう。
そして、送る方も、送られる方も、4月からは新たな日常が動き始める。
人は皆、自分で生きなければならないが、いろんなご縁で生かされている。
自分一人の力だけでは生きていけない。だが、頼りすぎても生きていけない。
順調や成功が続けば時に傲慢となる。人は失敗から多くを学ぶことができる。
大河の一滴としての自覚と誇り、志を持って、他の一滴と共に大海へ。
濁る日もあろうが、臆することなく堂々と、されど謙虚に細やかに流れたい。

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by inakasanjin | 2025-03-15 10:00 | Comments(0)