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拾って捨てる人生だろう

 おやっ、なんだと思った。改めて「拾」と「捨」の字が似ているのに気づいた。捨てられていた良いものを拾った気分になった。正反対の「拾う」と「捨てる」を一考する。
 いにしへより「拾う」も「捨てる」も詠まれた和歌は多いようだ。さがしてみる。

   今はとてかへす言の葉拾ひおきておのがものから形見とや見む   源能有
   信濃なる千曲の川のさざれ石も君し踏みてば玉と拾はむ      作者不詳
   伊勢の海のちひろの浜にひろふとも今は何てふかひかあるべき   藤原敦忠
   名のために捨つる命は惜しからじつひにとまらぬ浮世と思へば   平塚為広
   身を捨つる人はまことに捨つるかは捨てぬ人こそ捨つるなりけれ  よみ人しらず
   惜しむとて惜しまれぬべきこの世かは身を捨ててこそ身をも助けめ 西行法師 

 拾は、シユウ、ジュウ、ひろう、であり、収拾、拾得、拾遺集、命拾い、寒山拾得、落穂拾いなどがある。捨は、シャ、すてる、であり、姨捨、喜捨、捨扶持、掛捨て、四捨五入、切捨御免などがある。似て非なるものだ。テ偏に「合」と「舎」の違いは大きい。
 かってブームだった「断捨離」は、ヨガの「断行、捨行、離行」から生まれ、モノを断つ、モノを捨てる、モノへの執着から離れることで、簡単にいえば要らないものは捨ててスッキリの簡素生活を指した。ただ、日本人のモノを捨てることへの罪悪感もあり、モッタイナイ文化との軋轢もあってブームは去っているようだ。今「取捨選択」ではなく「拾捨選択」への思考へシフトしているようだ。そこで「拾」「捨」は川柳が似合ようで追ってみた。

   捨てる神拾う神あり片付かぬ      拾えないことを知らずに捨て台詞
   本命に捨てられ妻に拾われる      捨てる人拾うひとあり粗大ごみ
   捨てられて拾う神なくそのまんま    妻が捨て母が拾って減らぬゴミ
   捨てたいと思っていても拾うとし年齢  年だけは拾うばかりで捨てられぬ

 「拾」は、手を合わせると書く。そして「捨」は、「合」に「十」を加えて「舎」になり、手から離す。字面は、拾って、持って、考えて、使った思いを+(プラス)して「捨」になる解釈をしてもいいだろう。やはり人生一度きり。生き方上手になるには「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という。常に、拘ることなく「捨てる」覚悟さえ持っていればいい。










by inakasanjin | 2023-07-14 09:00 | 文学つれづれ | Comments(0)