2023年 01月 13日
ととからプロポーズの手紙
令和4年(2022)5月2日、北海道帯広市で鈴木智也さん(22)の告別式が行われた。式後、斜里町ウトロの港に止めていた車で見つかった智也さんの彼女への〝プロポーズ文〟を遺族が公表した。心こもる「嫁になってくれますか?の手紙」に心打たれる。
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誕生日おめでとう。今日でゆっちと出会って308日が経ちました。最初は本当に顔が小さくて可愛いな~っていい子だなって、それが今や彼女なんだよ!!!
凄くない?本当に運命感じたし、こんなに気が合う彼女って他に居ないよ。
喧嘩だって無いし、本当にハタチか?ってくらい大人だよ。ととをここまで支えてくれて、好きでいてくれてありがとう。そして、ずっとずっと大好きです。
周りにどう思われたって2人で乗り越えていくって決めたし、環境が変わっても俺が守るってゆっちは俺が大切にするって誓ったから。これからも一生一緒についてきてください。生まれてきてありがとう。愛しています。嫁になってくれますか?
7月7日に返事待ってます。 byとと 2022・4・23
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手紙は、智之さん(とと)が、彼女(ゆっち)への想いを素直に綴ったものだ。4月23日(事故の日)はゆっちさん、7月7日はととさんの誕生日。手紙は、多分、遊覧船観光の後に実現する智之さんのサプライズだったのではと思う。2人の優しい姿を想像する。
しかし、その姿は永遠に失われた。知床の冷たい海で若い命が喪われた。
知床観光船沈没事故として記録されるであろう海難事故は4月23日に発生。遊覧船「KAZD1(カズワン)」が北海道の知床半島西海岸沖のオホーツク海域で沈没して乗船者26名は、智之さん葬儀までに14名の死亡が確認、12名が行方不明である。
それで「とと」さんは見つかったが「ゆっち」さんは、まだ不明。海原で懸命の捜索が続く中「なぜ、荒れた海に出航したのか」などの議論も続き、関係先の捜索が行われ、遭難の原因究明に向けての捜査も始まった。誰もが生きて還るのを願っているが絶望的だ。
楽しい未来を約束していたであろう2人の遊覧船の旅は一瞬にして魔に襲われた。お互いが許し、思い合った命が、こんなにあっけなく消えるとは想像しなかったであろう。いつ何が起きるか、どうなるか。人生、常に「まさか」の「坂」にいる覚悟が大事だろう。