2022年 12月 30日
アカシアの雨がやむとき
日々の生活の中、ふっと口ずさむ歌がある。アカシアの雨…だ。哀愁をおびた歌唱による西田佐知子(1939~)の独特なハスキーボイスは忘れがたい。
アカシアの雨がやむときは昭和35年(1960)に発売されたシングルレコードだが、当時、A面B面には異なる歌手の歌が収録されていた。このレコードの片面は原田信夫「夜霧のテレビ塔」だった。ポリドール・レコードからの発売だがレコード・ジャケットの名は「西田佐智子」となっている。
それはともかく当時は、安保反対の国会デモ中、東大の女子学生・樺美智子さんが死亡、社会党の浅沼稲次郎が刺殺されるなど社会不安が続く。この歌は60年安保の世相を反映するテーマ曲となって広く浸透し始めた。西田の名も佐智子から佐知子へ修正された。歌は、昭和37年の第13回NHK紅白歌合戦に初登場、日本レコード大賞ではロング・セールが評価されて「特別賞」を受賞。日米安保闘争で闘い疲れた若者に共鳴したのであろう、ちょっと投げやりなボーカル、詞と曲が心に沁みた。そんな時代を代表する歌になった。
アカシアの雨にうたれて このまま死んでしまいたい
夜が明ける 日がのぼる 朝の光のその中で 冷たくなった わたしを見つけて
あの人は 涙を流して くれるでしょうか
アカシアの雨に泣いてる 切ない胸はわかるまい
思い出の ペンダント 白い真珠のこの肌で 淋しく今日も あたためてるのに
あの人は 冷たい瞳をして 何処かへ消えた
アカシアの雨がやむとき 青空さして鳩がとぶ
むらさきの 羽の色 それはベンチの片隅で 冷たくなった わたしのぬけがら
あの人を さがして遥かに 飛び立つ影よ
この歌、作詞・水木かおる、作曲・藤原秀行だが、青江三奈、藤圭子、ちあきなおみ、戸川純、小林旭、氷川きよしなど多くの歌手のカバーある珍しい楽曲だ。紅白には20回(1969)に再登場。その年は全共闘安田講堂事件、翌年は大坂万博、よど号事件、三島由紀夫割腹自決などの年。あの時代、心の揺れの激しい10年余だったが、歌が心を映す鏡でもあった時代。戻せるものなら時を戻したい。

