2022年 08月 26日
ふるさとを詠んだふるさとは
誰もが「ふるさと」をいろんなカタチで表す。研ぎ澄まされた詩人の表現を追う。
石川県金沢市出身の室生犀星(1889~1962)の有名な「小景異情(その二)」は、他郷ではなく、帰郷の折に詠んだとされる。ほかに「ふるさと」もあるようだ。
ふるさとは遠きにありて思ふもの/そして悲しくうたふもの/よしや/
うらぶれて異土の乞食となるとても/帰るところにあるまじや/
ひとり都のゆふぐれに/ふるさとおもひ涙ぐむ/そのこころもて/
遠きみやこにかへらばや/遠きみやこにかへらばや ー「小景異情(その二)」
雪あたたかくとけにけり/しとしとしとと融けゆけり/ひとりつつしみふかく/
やはらかく/木の芽に息をふきかけり/もえよ/木の芽のうすみどり/
もえよ/木の芽のうすみどり ―「ふるさと」
福島県福島市生れの「ふるさと詩人」といわれる田中冬二(1894~1980)は、早くに両親を亡くして東京の親戚で育った。幼い頃、黒部市生地の祖父の家を良く訪ねた。彼にとって、そこが「ふるさとの象徴」になって「ふるさとにて」などを遺している。
ほしがれひをやくにほひがする/ふるさとのさびしいひるめし時だ//
板屋根に/石をのせた家々/ほそぼそと/ほしがれひをやくにほひがする/
ふるさとのさびしいひるめし時だ//がらんとしたしろい街道を/山の雪売りが/
ひとりあるいてゐる//少年の日郷土越中にて ―「ふるさとにて」
山口県光市出身の丸岡忠雄(1929~85)が、長男誕生の日に詠んだとされる。
「ふるさと」をかくすことを/父は/けもののような鋭さで覚えた/
ふるさとをあばかれ/縊死した友がいた/ふるさとを告白し/許婚者に去られた友がいた//
吾子よ/お前には/胸張ってふるさとを名のらせたい/瞳をあげ/何のためらいもなく/
「これが私のふるさとです」と/名のらせたい ―「ふるさと」
青森県三沢市出身の寺山修司(1935~83)はマルチ文化人として活躍した。
ふるさとの訛なくせし友といてモカ珈琲はかくまで苦し 修司
詠まれた「ふるさと」は、読んだ者の心の中で無限大の広がりを見せるようだ。

