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ふるさとを詠んだふるさとは

 誰もが「ふるさと」をいろんなカタチで表す。研ぎ澄まされた詩人の表現を追う。

 石川県金沢市出身の室生犀星(1889~1962)の有名な「小景異情(その二)」は、他郷ではなく、帰郷の折に詠んだとされる。ほかに「ふるさと」もあるようだ。


  ふるさとは遠きにありて思ふもの/そして悲しくうたふもの/よしや/

  うらぶれて異土の乞食となるとても/帰るところにあるまじや/

  ひとり都のゆふぐれに/ふるさとおもひ涙ぐむ/そのこころもて/

  遠きみやこにかへらばや/遠きみやこにかへらばや    ー「小景異情(その二)」


  雪あたたかくとけにけり/しとしとしとと融けゆけり/ひとりつつしみふかく/

  やはらかく/木の芽に息をふきかけり/もえよ/木の芽のうすみどり/

  もえよ/木の芽のうすみどり      ―「ふるさと」


 福島県福島市生れの「ふるさと詩人」といわれる田中冬二(1894~1980)は、早くに両親を亡くして東京の親戚で育った。幼い頃、黒部市生地の祖父の家を良く訪ねた。彼にとって、そこが「ふるさとの象徴」になって「ふるさとにて」などを遺している。


  ほしがれひをやくにほひがする/ふるさとのさびしいひるめし時だ//

  板屋根に/石をのせた家々/ほそぼそと/ほしがれひをやくにほひがする/

  ふるさとのさびしいひるめし時だ//がらんとしたしろい街道を/山の雪売りが/

  ひとりあるいてゐる//少年の日郷土越中にて    ―「ふるさとにて」


 山口県光市出身の丸岡忠雄(1929~85)が、長男誕生の日に詠んだとされる。


  「ふるさと」をかくすことを/父は/けもののような鋭さで覚えた/

  ふるさとをあばかれ/縊死した友がいた/ふるさとを告白し/許婚者に去られた友がいた//

  吾子よ/お前には/胸張ってふるさとを名のらせたい/瞳をあげ/何のためらいもなく/

  「これが私のふるさとです」と/名のらせたい    ―「ふるさと」


 青森県三沢市出身の寺山修司(1935~83)はマルチ文化人として活躍した。


  ふるさとの訛なくせし友といてモカ珈琲はかくまで苦し  修司


 詠まれた「ふるさと」は、読んだ者の心の中で無限大の広がりを見せるようだ。












by inakasanjin | 2022-08-26 09:00 | 文学つれづれ | Comments(0)