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國崎八幡の「てまりまもり」

 村の鎮守の~と唄声が響くような福岡県京都郡苅田町稲光の小さな森の中に國崎八幡神社が鎮座する。社は、平安時代の創建といわれ「國崎臣祖菟名手命(くにさきのおみのおやうなでのみこと)」を主祭神とし、ご利益は「勝利」と「成功」といわれる。それにしても社殿の前に広がる田んぼの景色は、長閑で、静かで、想いを蘇らせる懐かしい風景だ。


 この神社に令和2年(2020)、父の跡を継ぐシングルマザーの権禰宜・辻加奈子さん(41)が誕生。彼女は、長い都会暮らしで、帰郷の度、幼い頃から親しんだ地域の「場所」に心和まされる自分に気づいた。改めて生まれ故郷を外からの目で見ることが出来た。そんな日々の中、都会生活に区切りをつけ「わが里の白川を守ろう」と決意、神主資格を取得、息子と2人で帰郷した。

 後、父が継ぎ守ってきた白川とその周辺の13の神域(國崎八幡・貴船4社・稲荷2社・國崎八幡分社・諏訪・菅原・天疫・窟・白山多賀)を引き継いだ。ところが社の錆び、荒廃する「姿」に心が痛んだ。そこでCF(クラウドファンディング)で資金を募り、朽ちかけた社の修復に併せてボランティアでの神社清掃、創建以来初の御朱印づくりや授与品の作成など、神社の環境整備に力を注いだ。地域活性化も推進した。


 皆との活動の中、神社の縁起物として「ちぃてまりまもり」なる新発想の「自分でつくる御守り」の「授与会」を定期的に開いた。インスタグラム発信で近郊から参加者が集った。

 てまりは、小さな和紙に、もみ殻を大匙2杯半ほど乗せ、その中に願いを書き込んだ小さな紙を入れ、紙をまるく包み、草木染もめん糸をくるくる万遍なく巻き始める。包み紙が見えなくなるまで巻いて、巻いて直径4㌢弱の、小てまりを完成させる。シックで落ち着く色合いの「ちぃてまり」は魅力的なかわいい姿で掌にのる。まさに、自分ひとりの「お守り」に変身する。創作では楽しい言葉が飛び交い、心を許す時が流れ、満足感を与えてくれる。

 また、まあ~るぃ「てまり」に倣い、令和3年から真っ暗な境内に「美しい光の紋様」を生む、まあ~るぃ「竹灯籠」75個が吊るされ、幻想的な世界を創出することになった。


 郷土の国学者・挟間畏三が「天孫降臨の地」とした名峰・高城山(415・6㍍)のすぐそばに鎮座する國崎八幡の取り組みは「田舎大好き、白川大好き」と語るシングルマザー神主と「神社」を囲んで暮らす地域の皆さんの熱い想いにかかっている。前進するのみ。


by inakasanjin | 2022-04-08 09:00 | ふるさと京築 | Comments(0)