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皇后陛下の「御歌」を掬う

 歴代の天皇が詠まれる和歌は「御製(ぎょせい)」といい、皇后、皇太后は「御歌(みうた)」とされ、皇族は「お歌(うた)」といわれる。明治から令和の皇后の御歌を掬う。


 【明治】昭憲皇后(1849~1914)お印は若葉。旧名は一条美子(はるこ)。

       みがかずば玉も鏡も何かせむまなびの道もかくこそありけれ

       はつかりをまつとはなしにこの秋は越路のそらのながめられつつ

       人ごとの良きも悪しきも心して聞けばわが身の為とこそなれ


 【大正】貞明皇后(1884~1951)お印は藤。旧名は九条節子(さだこ)。

       四方の国睦みはかりて救はなむ幸なき人の幸をえつべく

       昔わがすみける里の垣根には菊や咲くらむ栗や笑むらん

       さみだれはいとども袖をぬらすかなゆうふべの雲となりし君ゆゑ


 【昭和】香淳皇后(1903~2000)お印は桃。旧名は良子(ながこ)女王。

       あたたかきとつ国人の心つくしゆめなわすれそ時はへぬとも

       あめつちの神ももりませいたつきにいたてになやむますらをの身を

       きずつきし心の子らをいだきよするははともなりていつくしまなむ


 【平成】美智子皇后(1934~)お印は白樺。旧名は正田美智子。

       あづかれる宝にも似てあるときは吾子ながらかひな畏れつつ抱く

       語るなく重きを負ひし君が肩に早春の日差し静かにそそぐ

       彼岸花咲ける間の道をゆく行き極まれば母に会ふらし


 【令和】雅子皇后(1963~)お印はハマナス。旧名は小和田雅子。

       君と見る波しづかなる琵琶の湖さやけき月は水面おし照る

       生れいでしみどり児いのちかがやきて君と迎ふる春すがすがし

       災ひより立ち上がらむとする人に若きらの力希望もたらす


 御歌は、みうた、ぎょか、おんうた、おうた、おおんうた、と読む。また神に捧げる御歌(みか)とも読み、土地の再生を願って歌を奏でることは、光を生み、水や万物を浄めるとされる。まさに皇后の国母としての〝美歌〟を詠む響きには、民を想う魂が宿るよう。


by inakasanjin | 2022-03-18 09:00 | 文学つれづれ | Comments(0)