2021年 12月 24日
女から男へーゲヴェドース
この話題は、世界ふしぎ発見を超えるものであろう。驚くというより、人間の不思議な変化自体に怖さを覚える。いわゆる思春期は人間の身体に様々な変化が起きる、身長や体重、体毛、声変わりなど、男女それぞれが経験することだ。ところが西インド諸島・ドミニカ共和国の小さなサリナス村では、ゲヴェドース(12歳になると男性器が生える意味)と呼ばれる「性」の転換現象が起きる、つまり思春期に少女から少年に変化する不思議な症状がでる。村では、この違和感が珍しくないというから驚く。それも90人に1人の確立だそうで、名前も女から男名に替える者もいれば、そのままの者もいるそうだ。
ゲヴェドースは、妊娠8週間目から男性ホルモンのジヒドロテストステロン(DHT)によって男性器になっていくが、サリナス村の妊婦にはDHTの量に影響する「5a還元酵素」という酸素が足りずに起こる遺伝子疾患があり、男性器と精巣を持たない「子」を生むために女児に間違われる。そしてテストステロンが急増する思春期になると男性器が大きくなってゆく仕組みのようだ。少女として育てられ、やがて少年に変わるのだ。
ピンクのタンクトップからブルーのシャツに着替えて床屋で散髪する、そんな「少女が少年に変わる」奇妙な噂を聞き、1970年代、アメリカのコーネル大学・ホルモン障害分野専門のジュリアン・インペラート医師がサリナス村を訪問、確認、発見、発表した。
12歳でペニスができると云う現象を「悪魔、汚らしい」と忌み嫌う人もいれば「祝福、喜ばしい」と受け入れる住民もいて様々だ。とにかく多感な思春期の変化に少年少女自身が変化を実感しながら暮らすサリナス村があるという現実を認めるしかない。この現象はニューギニヤやトルコなどでも確認されているが、調査記録は残っていない。
日本は平成15年(2003)に「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律」なる長たらしい法ができて性同一の診断と治療のガイドラインなどが示されてはいるが、サリナス現象が出現したとしたら、日本人はどんな反応を示すだろう。
起こり得ないと思っていた、ことが地球上の片隅では起っている。その性的マイノリティーもごく普通に過ごせるサリナス村のような環境もできている。まず〝ものごとは早く知り、認める〟ことからが始まりになるだろう。いろんな世界があるということだ。