2021年 12月 03日
ひと粒の麦~Moment~
人の縁とは不思議。長崎出身のシンガー・ソングライターのさだまさし(1952~)は「直接の面識」はないアフガニスタンで2020年12月4日、非業の死を遂げた中村哲医師(1946~2019)へ「捧げる」歌をつくった。彼は「先生から手紙をもらったような歌」になったという「ひと粒の麦」は、大地に流れ、広がり、人々の心を励ます。
ひと粒の麦を大地に蒔いたよ/ジャラーラーバードの空は蒼く澄んで/
踏まれ踏まれ続けていつかその麦は/砂漠を緑に染めるだろう//
戦に疲れ果てた貧しい人達には/診療所よりも一筋の水路が欲しい/
水があればきっと人は生きられるだろう/諍いを止める手立てに//
Mom℮nt/薬で貧しさは治せない/
Mom℮nt/武器で平和を買うことは出来ない/
Mom℮nt/けれど決して諦めてはならない//
ひと粒の麦の/棺を担う人に/伝えてよ悲しんではいけないと//
この星の長い時の流れの中で/百年など一瞬のこと//
ペシャワールの山の向こうの見果てぬ夢意外に/伝えたいことは他にはあまり無い/
珈琲カップに夕日が沈む頃に/ふと思い出してくれたらいい//
Mom℮nt/いつか必ず来るその時まで/
Mom℮nt/私に出来ることを為せば良い/
Mom℮nt/私に出来るだけのことを//
Mom℮nt/薬で貧しさは治せない/
Mom℮nt/武器で平和を買うことは出来ない/Mom℮nt//
Mom℮nt/夢はきっと引き継がれるだろう/
Mom℮nt/私に出来ることを為せば良い/
Mom℮nt/私に出来るだけのことを
――「ひと粒の麦~Mom℮nt~」
さだは「お互い侠客の血を引く者として意識してきた」という。中村医師は芥川賞作家の火野葦平(1907~60)を伯父に持ち、北九州・若松港の石炭荷役請負「玉井組」を率いた玉井金五郎が祖父であり、さだは長崎港で港湾荷役の沖仲仕を束ねた「岡本組」の岡本安太郎が曾祖父である。まさに任侠の血を引く2人。中村医師の「無私の精神」は、大震災や豪雨被災地への支援ライブを続けるさだの「行動理念」に通じる。「義と情」の人間に対する深い愛は共通しているようだ。歩む道は違っても、また、まみえることが叶わずとも目指す愛は、交叉し、繋がり、深まって、救いと夢を灯し続ける。人の愛は永遠。