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辛に「一」が足されると幸 

 人生スゴロクにことば遊びがあってもいいだろう。辛はシン(音読み)からい、つらい、かのと(訓読み)。幸はコウ(音)さち、みゆき、さいわい、しあわせ(訓)と読む。それで「辛」は「十」の上に「立」って「一」の一画が足されると「幸」になる。

 さて「辛」には唐辛子、香辛料、辛酸、辛苦、辛抱、辛辣、辛勝、塩辛、甘辛、辛口、辛夷などがあり、歌、文には「よし野がはよしや人こそつらからめはやくいひてしことはわすれじ 凡河内躬恒」(古今和歌集)や「武蔵鐙さすがにかけて頼むにはとはぬもつらしとふもうるさし」(伊勢物語)などとある。

 そして「幸」には射幸心、幸運、幸福、幸甚、多幸、薄幸、不幸、巡幸、行幸、幸先、海幸山幸などあり、「太夫(ますらを)の心思ほゆ大君の命の幸を聞けば貴み 大伴家持」(万葉集)に「雨の降りぬべきになん見わづらひ侍る。身さいはいあらば、この雨は降らじ」(伊勢物語)ほか歌や文に採られている。


 そこで「辛」と「幸」を傍に置いて暮らしているであろう星野富弘(1946~)の言葉に心打たれる。彼は中学校の体育教師をしていたが、不慮の事故で手足の自由を失った。しかし、口に筆をくわえて詩や画を紡ぎ出し「花の詩画展」を全国各地で開いている。明るい絵と温かな言葉が、人々を惹きつける。

 そんな彼の「辛いという字がある。もう少しで幸せになれそうな字である」の呟きを聴くと、心底「そうですね」と応えたくなる。


 また、今、芸能界で活躍する話術の天才・明石家さんま(1955~)の生い立ちも辛い。3歳の時に実母が亡くなり、小学生の時に父が再婚。継母の連れ子が弟になった。継母からは無視されたが、興味を引こうと必死に笑いを取る発言ばかり。だが弟とは仲が良く、弟もさんまを慕った。売れっ子タレントさんま27歳の時、実家が火事になり最愛の弟(19歳)が焼死。ショックで引退を考えた。オール阪神・巨人の阪神さんが舞台の上で「おまんち、兄弟焼いたんだってな」のツッコミに「材木きれたんで、焼いたんや」のボケで返して引退を思い留まった。また昭和60年(1985)の「日本航空123便墜落事故」の「123便」に乗る予定だったさんま。事故のショックは続いた。

 彼の座右の銘「生きてるだけで、丸儲け」は悲しく辛い体験の表れだろう。笑いに隠れた辛さを見せない笑いは、凄い。

 とにかく辛と幸は紙一重。生きてゆく中、辛いに幸いは寄り添っているようだ。



by inakasanjin | 2021-09-24 09:00 | 田舎日記 | Comments(0)