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命をうたう、シャボン玉

 孫娘が来ると庭でシャボン玉を飛ばす。長男の娘と次男の双子娘3人、4歳の同い歳が集まると、必ず「ばば、しゃぼんだま」という。妻は用意のシャボン玉セットを出してくる。庭でシャボンをつくり、孫娘らは、消えるシャボンを追っかける、そっと近づき、手で掴まえようとする、しぐさがかわいい、風に吹かれ舞い上がるシャボン、消えるシャボン、孫らのにぎやかな声が庭を翔けめぐる、それに合わせて、歌を口ずさむ。さりげなく軽やかに唄うのだが、実は、この歌、ゆっくり語るように唄う歌なのだそうだ。


  シャボン玉飛んだ 屋根まで飛んだ 屋根まで飛んで こわれて消えた

  シャボン玉消えた 飛ばずに消えた 産まれてすぐに こわれて消えた

  風、風、吹くな シャボン玉 飛ばそ


 「シャボン玉」は野口雨情作詞・中山晋平作曲の童謡。詩は、大正11年(1922)仏教児童雑誌「金の塔」に発表され、翌12年に中山晋平の譜面集『童謡小曲』に載録されたというが、歌の成立時期はまちまちだった。雨情の夭折した娘への鎮魂説が有力だったが「仏教雑誌」への初出確定後は、郷里で少女らがシャボン玉で遊ぶ姿を見て、愛しい娘も生きていれば一緒にいただろう、の思いで書いた、に落ち着いたようだ。

 野口雨情(1882~1945)は、北原白秋、西條八十とともに3大童謡詩人と謳われた。茨城県北茨城市出身。廻船問屋の長男として生れ、東京専門学校に入学するが中退、詩作を始める。帰郷し家督を継ぐ、結婚、樺太に渡り失敗、東京で詩人宣言、北海道で新聞記者、協議離婚などを経て36歳頃から創作活動を再開した。代表作は「十五夜お月さん」「七つの子」「赤い靴」など多数。中山晋平(1887~1952)は、長野県中野市出身。旧家の出、唱歌好きな代用教員、東京音楽学校に入学、島村抱月や松井須磨子らと行動する。代表作は「てるてる坊主」「背くらべ」「ゴンドラの唄」など数多い。

 雨情は有為転変のなかで2人を亡くした。最初の娘は1週間、まさに「産まれてすぐにこわれて消えた」のである。生きる辛さが身に沁みた。そしてシャボン飛ぶかな、の大正12年9月1日、関東大震災が起きた。多くの命が「飛ばずに消え」た。人は「風、風、吹くな」と命を守り、命をうたう、シャボン玉は、おだやかな日々を願う歌なのだろう。

            


by inakasanjin | 2021-05-28 09:00 | 文学つれづれ | Comments(0)