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桜田十八烈士〝義〟を詠む

 安政7年(1860)3月3日、雪降る中、江戸城桜田門外で水戸藩脱藩者(17名)と薩摩藩士(1名)が彦根藩の行列を襲撃して大老井伊直弼を暗殺した。世にいう「桜田門外の変」である。この事件は「十八烈士」による〝桜田事変〟とも呼ぶ。不思議なのは事件前日に井伊直弼は先を見通しているかのような歌を詠み遺している。さすが安政5年から江戸幕府の弾圧によって始まる「安政の大獄」指揮官だけのことはある。


  咲きかけて猛き心の一房は散りての後ぞ世に匂ひける  井伊直弼(46)


 井伊大老襲撃では、稲田重蔵(46)唯1人、現場で闘死。増子金八(59)は逃亡、病死し海後磋磯之介(77)は逃亡、改名し警視庁に勤務など二人は余命を全うした。他の烈士16名は、自刃、斬首、刑死、病死など〝義〟を詠んで亡くなった。遺された言葉を探す。


  磐鉄もくだけざらめや武士の国の為にと思ひきる太刀     有村次左衛門(23)=薩摩

  桜田の花と屍はさらすともなにたゆむべき大和魂       佐野竹之介(21)

  君がため思ひをはしり梓弓ひきてゆるまじ大和魂       鯉渕要人(51)

  ともすれば月の影のみ恋しくて心は雲になりませりけり    広岡子之次郎(21)

  君がためつもる思ひも天つ日にとけてうれしき今朝の淡雪   斎藤監物(39)

  いたづらに散る桜とや言いなまし花の心を人は知らずて    森五六郎(22)

  君が為思ひ残さむ武士のなき人数に入るぞうれしき      森山繁之介(27)

  故郷の空をし行かばたらちめに身のあらましを告げよかりがね 蓮田一五郎(29)

  国のためなに惜しむべき武士の身は武蔵野の露と消ゆとも   黒沢忠三郎(30)

  人とはばつげよ日かげの草葉にも露のめぐみはある世なりきと 関鉄之助(39)

  吹く風に此のむら雲を払はせてさやけき月をいつか見ましや  山口辰之介(29)

  今更に云ひがひもなき我国のかたきなりけりから国の船    杉山弥一郎(38)


 遺されているであろう言葉も、広木松之介(24) 大関和七郎(25)岡部三十郎(43)は探せなかった。それにしても元禄15年(1702)12月14日の吉良邸討ち入りの日も雪の日だった。世を糺す〝義挙の日〟は、偶然にしても真白な雪が降り積もる。歴史は繰り返すというが、赤穂義士も桜田烈士も日本人の心の奥底に永遠の〝義〟を生んだ。






by inakasanjin | 2021-03-19 09:00 | 歴史秘話 | Comments(0)