2020年 06月 05日
べっぴんの対語はすっぴん
美男子を「二枚目」と呼び、美人を「べっぴん」と呼ぶ。日本語には人を見て呼ぶ様々な言葉がある。歌舞伎用語では、一枚目を主役、二枚目を色男、三枚目を道化、四枚目を中堅、五枚目を普通の敵役、六枚目を憎めない敵役、七枚目を巨悪、八枚目を元締め、となっているそうだ。ライバルキャラとして五,六,七枚目の役柄は、それにあった顔づくりも必要だろう。そんな顔を探すのに、主に「しょうゆ顔」と「ソース顔」があるようだ。
しょうゆは、あっさりしていて日本的で涼しげな顔の「弥生顔」ともいう東山紀之風。ソースは、彫りが深く西洋的な暑苦しさもある顔で「縄文顔」ともいい阿部寛風だと言われる。これまで「二枚目半」は、外見はカッコ良く、滑稽を演じられる草刈正雄風だったが、言葉そのものが消えつつある。そんな中、どうだ、すごいだろう、の自慢気な態度の「どや顔」が頭角を現してきたが、鬱陶しがられている。しかし、まだバカな「どや」がいる。
近年「顔」もバラエティーになり、マヨネーズ顔(国分太一)ケチャップ顔(竹内豊)オリーブオイル顔(速水もこみち)みそ顔(渡辺謙)酢顔(松田龍平)砂糖顔(小池徹平)塩顔(瑛太)などが出現。今風の女性が好むモテ顔は、小顔で目は細く、やや離れ、表情が変わらない無機質で冷たい印象の「へび顔」男子と言われる綾野剛風。ほんと、色々だ。
ところで美人顔はべっぴんと呼ばれる。べっぴんの語源は、愛知県豊橋市の「丸よ」という鰻屋が発祥だという。うなぎの焼き方や味を江戸風にして安価にして出した。そのうなぎの命名を、主人の友である渡辺小華(田原藩家老の渡邊崋山の息子)が〝頗別品(すこぶるべっぴん)〟とした。それを看板にしたところ珍しいと大繁盛。べっぴんは、京ことばで「別の品物」の意であったが、やがて女性の美しい容姿を指す言葉になってきた。そして「高貴な女性」を意味する「嬪」の字が当てられ「別嬪」になり「素顔でも美人」を「素嬪」と呼び、べっぴんの対語はすっぴん、になった。言葉の誕生は意外なところで生まれる。
女性の「別嬪」に対して男性は「男前」。歌舞伎の世界で「前」は役者の「動き」で、男の動作の美しさを「男前」と呼ぶようになったという。人の姿は、やはり歌舞伎から多くの言葉が生まれているようだ。男は、カッコいいが軽々しい「イケメン」よりも落ち着いて色気ある「男前」のほうがいい。それで「一人前」の男として認められるだろう。
by inakasanjin
| 2020-06-05 09:00
| 田舎日記
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