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生きてゆく心をさがす

 生きてゆく中、先人の詩や句、歌などの言葉にやすらぎを見つけ、想いを重ねて暮らしていく。喜怒哀楽の悲喜こもごも、言葉に傷つきもするが、救いもあるようだ。言葉を追う。

 詩人の岩崎航(1976~/宮城県仙台市)は、進行性筋ジストロフィーを患い24時間ベッドで過ごす。彼の初詩集『点滴ポール 生き抜くという旗印』に「貧しい発想」という詩がある。苦しみ、悲しみを超えた視点からの言葉に納得する。言葉の深さを想う。


  管をつけてまで/寝たきりになってまで//そこまでして生きていても/

  しかたがないだろう?//という貧しい発想を押し付けるのは/

  やめてくれないか//管をつけると/寝たきりになると/

  生きているのがすまないような/世の中こそが//重い病に罹っているー「貧しい発想」


 仏教讃歌「生きる」があるのを知った。童謡・童話・詩人そして浄念寺住職である中村静村(1905~73/奈良県橿原市)の初詩集『そよ風のなかの念佛』に納まる詩「生きる」にメロディーがついたものだ。女声合唱団の厳かな歌声は心に沁みてくる。


  生かされて 生きてきた/生かされて 生きている/

  生かされて/生きていこうと/手をあわす/南無阿弥陀仏//

  このままの/わがいのち/このままの/わがこころ/

  このままに/たのみまいらせ/ひたすらに/生きなん今日も//

  あなかしこ/みほとけと/あなかしこ/このわれと/

  結ばるる/このとうとさに/涙ぐむ/いのちの不思議 ―「生きる」


 俳人も歌人も生きていることの証として言葉を紡ぎだす。遺された言葉は永遠。


  生きていることに合掌柏餅    村越化石

  死んだ夢は生きた夢也花芒    正岡子規

  あかあかと一本の道となりたりたまきはる我が命なりけり    斎藤茂吉

  はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る  石川啄木


 日々の暮らしで、楽より苦が「生きる」思いを強くする。生きる苦しみがあってこそ人は往生できるのかもしれない。所詮〝苦界浄土〟で、生きる心をさがし続けるのであろう。


by inakasanjin | 2023-04-28 09:00 | Comments(0)