2023年 04月 28日
生きてゆく心をさがす
生きてゆく中、先人の詩や句、歌などの言葉にやすらぎを見つけ、想いを重ねて暮らしていく。喜怒哀楽の悲喜こもごも、言葉に傷つきもするが、救いもあるようだ。言葉を追う。
詩人の岩崎航(1976~/宮城県仙台市)は、進行性筋ジストロフィーを患い24時間ベッドで過ごす。彼の初詩集『点滴ポール 生き抜くという旗印』に「貧しい発想」という詩がある。苦しみ、悲しみを超えた視点からの言葉に納得する。言葉の深さを想う。
管をつけてまで/寝たきりになってまで//そこまでして生きていても/
しかたがないだろう?//という貧しい発想を押し付けるのは/
やめてくれないか//管をつけると/寝たきりになると/
生きているのがすまないような/世の中こそが//重い病に罹っているー「貧しい発想」
仏教讃歌「生きる」があるのを知った。童謡・童話・詩人そして浄念寺住職である中村静村(1905~73/奈良県橿原市)の初詩集『そよ風のなかの念佛』に納まる詩「生きる」にメロディーがついたものだ。女声合唱団の厳かな歌声は心に沁みてくる。
生かされて 生きてきた/生かされて 生きている/
生かされて/生きていこうと/手をあわす/南無阿弥陀仏//
このままの/わがいのち/このままの/わがこころ/
このままに/たのみまいらせ/ひたすらに/生きなん今日も//
あなかしこ/みほとけと/あなかしこ/このわれと/
結ばるる/このとうとさに/涙ぐむ/いのちの不思議 ―「生きる」
俳人も歌人も生きていることの証として言葉を紡ぎだす。遺された言葉は永遠。
生きていることに合掌柏餅 村越化石
死んだ夢は生きた夢也花芒 正岡子規
あかあかと一本の道となりたりたまきはる我が命なりけり 斎藤茂吉
はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る 石川啄木
日々の暮らしで、楽より苦が「生きる」思いを強くする。生きる苦しみがあってこそ人は往生できるのかもしれない。所詮〝苦界浄土〟で、生きる心をさがし続けるのであろう。